21日目−8月21日（木）− | ||||||||||||||||||||||||||||||
起床7時に目が覚める。左腕の腕時計を見る。今日は21日だから、21日目だ。 お遍路を始めてから3週間が経ったことになる。 家を発ってからというものの、目が覚めて目に入るのは決まって見知らぬ天井だ。 この町には僕が知っている人も、僕を知っている人もいない。なんてことは微塵も考えず、今日朝ごはん何食べようとか考えてた。 
少し考えたけどね[7:16] 1階の玄関に停めてあった自転車の横に座り、昨日買っておいたブレーキシューを後輪の古いものと交換する。 僕には難しいかと思われた交換は、思った以上にすんなり成功した。やったぜ！ これで前後輪のブレーキが完璧になった。やったぜ！！喜ぶ僕におばちゃんがコップ入りの麦茶を差し出して くれた。やったぜ！！！ 部屋に戻って荷物を片付け、見送りをしてくれたおばちゃんにお礼を言い、旅館を後にする。 
お世話になりました[8:26] 朝マック昨日晩ご飯を食べに国道に出たときに、びっくりドンキーの反対側にマクドナルドを発見していたので、 今朝の朝食はそこでとることにしよう。アイムラビニッ！と心の中で呟き、店内に入る。カウンターには 元気そうなおばちゃんが立っていて、雰囲気としてはマックよりも八百屋の方が似合う感じだ。お店の外にはたくさんの「ビッグマック２００円」の旗が立てられていたので、それをおばちゃんに 頼んだところ、「朝はやってないのよ」と言われた。朝は朝マックだけらしい。そこで「このソーセージの マフィンと、ポテトと、牛乳を下さい」と言い、最後に「朝早いのに大変っすね」と一言付け足す。 すると、「若い子なんてもっと早いのよ。夜中の3時から働いてたりするんだから」と返された。3時！ それってお遍路より大変なんじゃないのか。へらへら笑いながら自転車を押して歩くだけの僕のお遍路が、 なんだか情けなく思えてしまった。なんというか、バイトをしている人、というか働いている人って本当にすごい。 おばちゃんからマフィンなどを受け取り、適当な席につく。 
三種の神器[8:34] 
あれに登ります[8:49] 
既に傾斜がやばい[8:53] 84番へ84番のお寺は山の上にあるらしい。以前はケーブルカーが通っていたそうだが、今ではもう運行を停止 しているのだとか。諦めて自分の足で登る決意をする。泊まった旅館の近くにはケーブルカーの乗り場があって、その近くには階段があった。 どうやらこれを登ればいいらしい。地図なんか見なくても分かる。だってそれっぽいもの。 自転車を階段の脇に停め、納経帳だけ持って山を登っていく。 
逃げ出さないか心配[9:01] 
この道でいいはず･･･[9:03] 
なんだここ[9:06] 
目印なんかあるから余計にね[9:07] 登山道に差し掛かったところで、信じられない傾斜の坂に出くわした。 
２１％と書いてある[9:32] 
「約30分山に向かって頑張ろう」[9:40] 山登りといっても、 道は整備されていてすごく登りやすくなっているし、周りには参拝客であろう人の姿も多く見られる。 でも、もしかしたらこの人たちは全員道を間違えていて、本当はさっきの道正しかったのかも、なんて考えるが、 それはないなと考え直す。大勢の人に埋もれる安心って大きい。挨拶したり挨拶されたりしつつ登っていく。 
「シャシャンボ」という種類の木[9:45] 大学生と別れ、再び登っていく。 
新緑プラネタリウム[9:52] 
頂上まて200m！[10:01] そして到着した。 
[10:06]
お菓子を食べながらお寺の周りをうろつく。 お寺の周りは土産物やら宿泊施設やらが立ち並んでいて、 ほとんど観光地化している。なんと水族館まであるというから、マンタ大好きっ子こと僕は 急いで向かうことにした。 
青空が似合うお寺[10:08] 
お狸さん[10:15] 
開いたり閉じたりしそう[10:15] 
すげー涼しそう[10:21] 
闇に侵食される空[10:22] 
うおお[10:22] 
すごい向こうの山も見える[10:22] 
おっ[10:25] 展望台を離れて土産物売り場へ足を運ぶと、あるお店に鎧が飾ってあった。 
「この鎧を金四十八万円にてお譲りいたします」[10:25] 那須与一
絵うまいなー[10:27] 僕はてっきり那須与一って人は「俺にしか あれは射れねえぜ」って感じで自分から射手を名乗り出たのかと思ってたけど、このサイトの記述に よるとそうではなくて、周りの人に「やれよ」と言われて嫌々弓を引いていたらしい。 クラス会でボーリングに行き、気の弱い男子に「絶対ストライク出せよ、出なかったらアイス 全員に奢りだからな！」と吹っかけたところ、三連続でストライクを出されてしまったような ものだろうか。 
デートするなら屋島でどうぞ[10:27] 
君らにとっては見飽きた景色かな[10:27] 
地球はマジで丸い[10:28] 
ここも昔は島だったそうです[10:28] 水族館ここらへんで僕がお遍路に来た目的を確認しておかなくてはならない。何のために四国まで来たかというと、 水族館だ。四国八十八の水族館を回って魚に詳しくなるのが目的だ。というのは冗談だけど、このぐらいの寄り道ならお大師様も多めに見てくれるだろう。受付で 「高校生一枚」と言ったが信じてもらえなかったので、仕方なく原付の免許を見せてチケット購入。 700円。館内に入る。 にやついた表情を隠そうともせず、全てのコーナーを少し早足で回る。「同行二人」で僕と一緒に いるはずのお大師様も、 
カメーン[10:36] 
それにしてもでかい[10:37] 
イルカはいるか[10:37] 
「呼びました？」[10:38] 
「ごましお」以外の名前が思いつかない[10:39] 
太いよ[10:41] 
こういうのって部屋で飼えるのかな[10:41] 
「部屋次第ですね･･･」[10:41] 
魚を食べてる[10:41] ショーが始まるまで数分ほど時間があるらしかったので、それまで手に持っていた納経帳を広げて時間を潰す。 既に1番から84番までのページは朱印が済んでいるため、空いているページは残り僅かだ。納経を見ながら 「ここのお寺はきつかった」だの「ここのお寺で腹下したんだよな」だの思い出す。 アシカの一匹が調子が悪いとかで少し開始が遅れたが、数分したら無事にショーが始まった。 
壁の絵が気になる[11:05] 
「アシカさんと握手してみましょう！」[11:13] 
人魚かと思った[11:19] 
「個性？大事にしてますよ」[11:20] 
「ファーストキスは中２でしたね」[11:20] 
うおおおおおおお[11:20] 
マンタだ[11:22] 
「自立？してますよ」[11:23] 
笑うしかない[11:25] 
落ち込むなよ[11:25] 
インディアンの族長[11:26] 
ういーーーー[11:27] 
こいつら見てると安心する[11:28] 
「俺らも人間見てると安心しますよ」「そうすね」[11:28] 
「「「屋島の信号トリオとは俺らのことだぜ！」」」[11:29] 
アンギャー[11:34] 
「好きな色？･･･モスグリーンとか」[11:35] 
「俺は逃げも隠れもしねえぜ！」[11:36] 
「僕のゲームボーイがないよう」 「「「任せろ！！」」」[11:37] 
「あ、システムキッチンだわ！ありがとうパパ！」[11:38] 
マリオのゲームでトラウマになったウツボ[11:39] 
「触られる方の気にもなってみろよ！」[11:42] ふと携帯の底の部分を見ると、充電のコードを挿すところのカバーが外れていた。 どうやらカバーが浮いたまま水に沈めてしまったらしい。そのせいか携帯もどこか調子がおかしい。 恐らく充電するところから水が入ってしまったのだろう。 え、こういうときってどうすればいいんだ。今カバーを閉めたら中の水が出れないかもしれないし、 開けておいたら周りの水が新たに浸入するかもしれない。どうしたらいいんだ。 結局どうもしないことにして、再び水族館をうろつく。 
外では別の何かのショー[11:47] 
ちょうどお昼だ[12:00] 
「どうでしたか？魚は」[12:18] 
「行きたかったぜえ」[12:18] 85番へさて、次に目指すのは85番札所「八栗寺」だ。そう距離がある訳ではないが、標高が200mほどある。 時間もあるし、いつも通りのんびりやろう。お寺に向かって走っていると、こんな看板を見つけた。 
「ようこそ庵治町へ」[12:45] 
雲行きが怪しい･･･[12:45] 
町のいたるところに石材[12:48] 
「キャウンッ」[12:50] 
雨降らないといいけど･･･[13:01] しばらく登ったところで、右手にお地蔵さんを見つけた。お供えものがしてあったので近寄って見てみると、 SOYJOYだった。最近のお地蔵さんは忙しいのかもしれないな、なんて思ってそのまま通り過ぎる。10mほど 離れたところで後ろから「ギャー」というカラスの鳴き声が聞こえた。振り返ってみると、さっきの お地蔵さんのSOYJOYをカラスが取ってしまっている。足で袋を抑えてクチバシで器用に袋を空け、 中身のバーをつついている。大塚製薬の開発部が見たら落ち込みそうな光景だ。もしかしたら 「カラスにすら気に入ってもらえるなんて」と喜ぶかもしれないけど、多分それはない。 
ちなみにSOYJOYの賞味期限は9ヶ月です[13:15] 
SOYJOY騒動から20分経過[13:35] 
[13:38]
まさに山のお寺って感じがする[13:38] 
崖が崩れないか心配[13:47] 
半目で見れば目玉焼き[13:47] 
ここの景色もいい[13:51] 
ブレーキが効くから安心して下れる[13:51] 
お煎餅だ[13:55] 
下っていきます[13:57] 86番へ85番のふもとまで下りたところで一旦自転車から降り、地図で次のお寺までのルートを確認する。 ちょっと道がややこしいが、どれだけ迷っても今日中には辿り着ける距離だ。通りかかったスーパーでうどんを買って食べる。 
天丼とうどんセット[14:10] 
自転車遍路に追い抜かれる[14:27] 
道の駅「むれ」[14:41] そして86番のお寺に到着した。 
[14:52]
立派な塔[14:54] 
ふたつかー[14:56] 
ふたつで終わりか･･･[14:57] 
探し人って書いてある[15:05] 多分、僕が家族に何の連絡もなしにお遍路に出ていたとしたら、 うちの家族は同じような張り紙を作って僕を探しただろう。そんな気がする。 そういえば前に家に電話したのはいつだったっけ･･･。 今夜宿に泊まったら家に電話することを決め、そして いなくなった人が一日でも早く見つかることを願い、納経所を出る。 お寺を出ようとしたところで、中年の細身のおっちゃんに出会った。おっちゃんは ここの生まれらしくて、長い間地元を離れて働いていたそうだが、今日20年ぶりに このお寺にお参りしに来てみたんだとか。20年ぶりってすごい！僕なんか卒業して 3年経っただけの小学校ですら堪らなく懐かしいっていうのに、20年って。 おっちゃんは「この寺は汚いけど、好きだ」と言っていた。その言葉には20年の重みが詰まっていた。 よく分かんないけど。 おっちゃんと別れ、お寺を後にする。 87番へ次の87番のお寺へはまっすぐ南下するだけで着くらしい。
壮大な雲[15:24] 
川だ[15:39] 
[16:05]
宿探しさて、残るは88番札所「大窪寺」だけだ。ところがこの大窪寺、最後のお寺というだけあって すごくキツい山の上にあるそうだ。気を利かせたつもりだろうか。確かに最後のお寺が 町中のジャスコの隣とかでは雰囲気が出ないし、山の中にあるのはまさに打ってつけだけど･･･。どちらにしろ今日は時間が遅いので、もう宿に泊まってしまうことにする。ここのところ宿に泊まってばかり だけど、なんてったって最終日だし、それに、例えばポケモンのゲームだって最後の四天王に挑戦する前には 都合よくポケモンセンターがあるから、つまりはそういうことだろう。 マップの宿一覧からお寺の近くの民宿を探し、お寺のまん前にある一軒の民宿に電話をかけて値段を聞き、 やっぱりやめて別の民宿に電話をかける。が、繋がらないので直接宿に出向く。応対した女将さんと 値段交渉してみたところ、最初の値段より大幅に引き下げてもらった。ありがとうございます･･･。 玄関に停めておいた自転車からバッグを外して肩に背負い、女将さんに案内されて2階の部屋に向かう。 中に入るなりバッグを投げ捨て、部屋の中央に大の字になる。これやるのも今日で最後だ。 お腹がすいたので晩ご飯を食べたいが、やはり素泊まりなので食事は出ず。 近くにスーパーがあるそうなのでそこで何か買って食べることにしよう。 その前に風呂に入りたいが、お湯はまだ沸いていないという。それで廊下の棚にあった 「稲中卓球部」の漫画を読んでみたところ、読み入ってしまい、それでお風呂に入るのが遅れてしまった。 女将のおばちゃんは足が少し悪いらしく、だからあまり無理もできないんだけど、なのに僕はときたら 安くしてもらったばかりか風呂に入るのも遅れ、本当に申し訳ない。広いお風呂に浸かりながら 反省する。 お風呂から上がり、部屋に戻って洗濯物を取ってくる。風呂前の洗濯機に汚い服を全て投げ入れ、 スイッチを入れてゴウンゴウンと回す。迷惑かけた上に洗濯機まで使わせてもらって･･･。 申し訳なさに押しつぶされそうになるが、それでも洗濯はさせてもらう。 洗濯をしている間に一旦宿を出てスーパーに向かう。外はもう真っ暗だ。お寺に着く直前に見かけていたので 大丈夫だろうと思っていたが、真っ暗で何がなんだか分からない。 仕方なくいつもの癖で道を歩く人に道を尋ねたところ、すごく不審がられた。それはそうだ。だって暗いもの。 道を教えてくれたおじさんにお礼を言い、スーパーへ。そこでカップ焼きそばを買い、お店を出る。 すると一件のメロンパン屋が目に入ったので、ふらりと立ち寄ってみる。ところがお店はもう 閉店寸前だったらしく、お店自慢のメロンパンとかもないそうだ。 
お店にあった等身大の人形[20:10] 洗濯物を取り出そうと風呂場前の洗濯機を覗いてみたところ、洗濯したはずの衣類が全て消えていた。 不思議に思って女将さんに聞いてみたところ、洗濯が終わったところでわざわざ部屋まで届けて くれたのだそうだ。本当に何から何まですみません･･･。 部屋に戻ってカップ焼きそばを食べようとしたところで、部屋にポットがないことに気付き、 おばちゃんにお湯をもらいに1階に下りる。お湯が沸くのを待つ間、台所でおばちゃんと話しをする。 女将さんはこのあたりでも有名な「名物女将」らしくて、テレビや新聞なんかでも取り上げられたことが あるのだそうだ。 そして、驚くべき事実を僕は耳にした。なんと、高校生でのお遍路は少なからずいるというのだ。しかも 女子高生が一人で回ったりとか、ほとんど野宿で回りきってしまうなんていう人も過去にはいたそうだ。 僕はこれまで自分の年齢を鼻にかけていた節があったので、すごくショックを受けた。 自惚れていた自分が恥ずかしくなった。 恐らく、この先自分より若くて自分よりすごい人っていうのは掃いて捨てるほど出てくるだろう。 そんな彼らに出会う度に悔しがっていたら身が持たない。もう年齢で競うのはやめようと思った。 お湯を入れてもらって部屋に戻り、部屋で焼きそばをすする。おいしい。食べ終えたところで 部屋の隅の机の上にお盆が置いてあることに気付いた。 
おしぼり？[20:41] 布団を敷き、日記を書いてラジオを録る。家の母親と電話し、その後に友達に電話する。明日のうちに 家に帰れなくなった場合に家に泊めてくれないかと無茶なお願いをしたところ、いいよと言ってくれた。 本当にありがとう。僕が今まで受けた恩に対して僕が返せてる分は、本当に僅かなものだ。 いつかみんながキレるんじゃないかと気が気でない。これは今もだけど。 電話を切って枕元に起き、結願したときの喜びの程を想像し、失敗し、寝た。 一日の走行データ
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