22日目−8月22日（金）− | ||||||||||||||||||||||||||
起床朝6時前に目を覚ます。今日はお遍路の最終日だ。布団の中で少しぼうっとする。
溢れる自分の部屋感[5:52] 
宿賃値引きしてもらってんのに･･･[6:29] 玄関の自転車を押して外に出る。女将さんは見送りまでしてくれた。最後に大きな声で「ありがとう ございました」と言い、民宿を後にする。 
頑張ろう[6:54] 88番へ88番札所「大窪寺」へ行く道は大きく分けて2種類あり、ひとつはしっかり舗装された車道、もうひとつは 距離の短い登山道だ。車道は大きく遠回りすることになるが、走りやすい。登山道はその逆で、 距離は短いが道が険しい。僕は自転車を連れているので登山道は無理かもしれないが、ひとまずそれは 置いておいて、とにかく分岐点まで行ってみよう。
歩道の終わり[7:07] 
サンドイッチ・バーガー・ジャムパン・いちごミルク[7:18] 
ダムだ[7:32] ダムから少し走ったところで「前山おへんろ交流サロン」という施設を見つけた。 
なんだろう[7:42] 
掛け軸に納経するとこうなります[7:44] 
ピコーン[7:46] その模型で遊んでいると、施設の館長と思しきおじさんが現れて、僕にブルーベリーをくれた。一粒 つまんで口に放る。甘くておいしい。おじさんにお礼を言ってサロンを後にする。 サロンに来ていたもう一人のお遍路さんの話しによると、このサロンではお遍路のピンバッジが貰える そうだが、おじさんはくれる素振りを見せなかったから僕も何も言わなかった。欲しかったけど、 ブルーベリー貰えたしいいや。 選択そこから更に走っていくと、分かれ道が現れた。ついに来たか。自転車から降りて考える。右の車道に進めば、距離は遠いが確実にお寺に着くだろう。自転車もあるから車道のほうがいいのは 分かりきっている。そこで右の道を行こうとして、急に足が止まる。もう一人の自分が言う。 「無難な道を歩いて、本当にお遍路の終わりが迎えられるのか？雲辺寺のときだって 挑みもせずにロープウェーに逃げてたし、こんなんで本当にお遍路だといえるのか？お遍路の「遍路」 って「険しい道」って意味じゃなかったのか？知らないけど。」 そんなことを責め立てられ、「だ、だよな！」と賛同し、二人そろって左の道へ。 
行くぞ登山道！[8:05] 
あと6.7km[8:09] 
最後の山登り[8:18] そして、「これ絶対道を間違えてるよ」というような坂に出くわし、絶望する。傾斜がキツい上に 道は細く、路面がサラサラなので登ろうとすると上滑りするのだ。 一歩一歩慎重に登り、なんとか坂の頂上まで登りきる。 
これを自転車押して登りました[8:31] 
右の柵には電流が流れてます[8:31] 
後にも引けない[8:33] 
夢のようだ[8:35] 
行かないでよ！ねえ！[8:37] 
ああ・・・[8:46] 山中の出会い分かれ道で左を選んだ時には想像もしてなかった程、道は険しかった。
どこだここ･･･[8:50] しばらく歩くと、右の林の中から「ガサッ」という音がした。何だろうと思って首を右に降る。 猿だった。野生の猿が林の奥からこちらを見ていた。それも一匹ではなく、何頭もの猿がこちらを見ている。 「猿と目を合わせていけません」というのはよく聞くので、あまり見ないようにして歩く。 すると、今度は左手から「バウッ」という音がした。今度は何だと思って左を見ると 
バウバウ[8:50] 人が住んでいるという事に安心を覚えて再び歩き出すが、道の右側の林を猿がうろついていて、怖い。 部活で鍛えた柔道は猿相手には通用しそうもない。襲われたら大人しく持っているジャムパンを差し出して 土下座しよう。そんな事を考えていると、さっきの民家から人が出てきた。歳をとったお婆さんだった。 そこで、「すいません、猿がいるんですけど！」と大声で言うと、「分かった！」と返事が返ってきた。 どうするんだろうと思った直後、「パァン」という火薬音が民家から聞こえてきた。音に驚いて逃げ出す 猿たち。これで安心して進めそうだ。ここの人たちはこういう形で猿と共存しているのだろうか。 
そしてこの道は本当に通れるのだろうか[8:53] 苦難の道のり草むらには、僅かではあるが草の分け目があって、それで何とか人の通る道だと分かる。
この道がお寺に通じてるかは分からないけど[8:55] 「渡れったってこっちは自転車だぞ！！」と少しキレる。キレて、落ち着いて、考える。どうやって 渡ろうか。「この橋渡るべからず」のようだ。こっちは橋じゃなくて石だけど。 そこで、自転車からサイドバッグを一個外し、それを持って川の向こう岸へ渡り、バッグを置く。 そして反対側に戻って同じようにサイドバッグを反対側まで運び、最後に自転車をかついで 石を渡った。 「完璧じゃん！」とサイドバッグを自転車に取り付けながら、自分に酔いしれる。今考えると そう変わったアイデアでもないんだけど、その時は状況が状況だったから。関係ないけど こういうクイズありましたよね、「オオカミと羊を川の向こう岸に渡せ」というようなやつ。 川から少し登ったところで、石段が目の前に立ちはだかった。 
次から次へとお前らは･･･[8:57] 
うおっ[9:01] すると、ものすごく急な下りの階段に差し掛かった。 
写真じゃ角度が分かりづらいかも[9:15] 
右側に落ちたら死ぬな･･･[9:21] 
部活でもこんなキツいことはしなかった[9:22] 再会両手の握力が限界まできたところで、階段の向こうが白く光っているのが見えた。
あれは･･･！[9:24] まばゆい光は近付くにつれてその輝きを増し、そしてついに 
[9:25]
日光がさんさんと降り注ぐ[9:26] 
夢のように歩きやすい(前回比)[9:34] 
「女体山山頂まで一、一三八米」[9:36] 
よかった･･･[9:36] 
車が通る気配もない[9:58] 
町がうっすらとしか見えない[9:58] 
10時です[10:00] 
この中に一匹ぐらい猿いるんじゃ[10:04] 
あ、町だ[10:06] 
よく登ってきたよホント[10:15] 
「絶景」[10:19] 
すごく長いクモの巣[10:28] 
日陰になっちゃってる[10:30] 
だいぶ降りてきたなあ[10:32] 
残り2.9km！！[10:39] 
最後のドキドキ感[10:40] 
[10:49]
右手にはたろう君[10:53] 
最後かー･･･[10:55] 
ダイソーからこんなとこまで来ちゃったね[10:58] 
こんなとこまで来ちゃったよ･･･[11:00] 迷わずそれをお願いし、渡された紙に自分の名前を書く。納経所のおじさんがそれを見て 賞状のような結願証に僕の名前を書く。 
部屋に飾ろう[11:06] 
結願修行大師像[11:09] 
ベランダみたいなのがついてる山門[11:09] 
焼けすぎ[11:12] 
こんなんでした ふと右手を見ると、山門の横にうどん屋さんがあった。お腹も空いていたし、この山を降りたら 徳島県に入ってしまうので、最後のお寺で最後のうどんを食べることに。中に入って 月見うどんを注文する。 
おいしそう[11:21] 
さらば大窪寺[11:55] お礼参りさて、これで88箇所のお寺をすべて参拝した訳だが、お遍路ではこの後に「お礼参り」というものがあるそうで、 88番のお寺を打った人は、再び最初の1番のお寺を参拝するのが通例となっているそうだ。そのまま 帰っちゃってもいいみたいだけど、僕は最初のお寺をもう一度見たくなったので、そのお礼参りをすることに した。
下っていきます[11:55] 
お、久しぶり！[12:12] 
でもここは知らない道[12:40] 
これも知らない道[12:49] 
これも知･･･これ知ってる！[12:54] 看板を離れ、走行を再開する。向かいからは大勢のお遍路が始まったばかりの人たちが歩いてきて、 その流れに逆らうようにして走る。 
懐かしいなー[13:05] 
地元のようだ[13:50] 
ここって！[13:58] 途中でコンビニに寄って、トイレを借りた。 
もう終わりです[14:19] コンビニを出て少し走ったら、道に迷ってしまった。高台の住宅地に迷い込んでしまい、 恥ずかしいことに下に降りれなくなってしまったのだ。 
降りれない！[14:49] 
[15:18]
ここで地図とかを買いました[15:26] 訳が分からないが、断る理由もないので手首から一本の数珠を外し、尼さんに渡す。尼さんは「ちょっと 待っててね」と言って奥へ姿を消した。恐らく自分の数珠を持ってくるつもりだろう。 「ご利益でもあんのかな･･･」と数珠をしげしげと眺めていると、膝上の左腕にはめてあった 腕時計の数字が目に入った。 もうすぐで4時になろうとしている。慌てて出発しようとするが、尼さんがいつまで経っても戻って こない。数珠は尼さんにあげることにして、外に出る。 羽織っていた笈摺を脱ぎ、3週間の匂いを嗅ぎ、ウェッとなり、バッグに詰める。 自転車に跨り、お寺を後にする。 フェリー乗り場へさて、お礼参りも終わったが、家に帰るまでがお遍路だ。だけど今日中に愛知の家まで帰るのは無理そうだ。 今夜は大阪の友人の家に泊めさせてもらって、明日ゆっくり家まで帰ることにする。ところが、フェリー乗り場までどう行ったらいいのか分からない。僕の持っている地図は あくまでもお遍路のための地図であって、徳島全域を網羅してはいないのだ。 とりあえず東へ走って海沿いの道まで出て、そこから南下していけば乗り場が見えるはずだ。多分。 そんな危なっかしい感じでフェリー乗り場を目指す。 
どこの橋か分からないけど渡る[16:40] アーロン号の本来の実力に驚いていると、 
あ！[16:58] 
風が強い[17:03] 待合室の隣には土産物売り場とレストランがあった。まず土産物売り場でお土産を物色する。 家族用とバイト先用と友達用だ。徳島ということで鳴門やすだち関係のものが多く、あと 「お遍路に行ってきましたクッキー」なんていうのもあって、面白かった。結局 それぞれ無難なものを買い、レストランへ。 何を食べようか迷ったが、最終的には徳島ラーメンに注文した。 
濃い目の醤油スープ[18:36] 
パカッ[18:46] しばらくするとフェリーが出港した。船室で横になり、船が和歌山に着くのを待つ。お遍路で起こった 様々な出来事を思い返す。すると、どういう訳か船酔いしてしまった。行きの船では酔う気配すらなかったのに。 どうしようもないので近くの本棚にあった「テニスの王子様」の漫画とニンテンドーDSで時間を潰す。 フェリーが和歌山に着いたのは、もう夜の9時になろうかという頃だった。船室を出て 階段を降り、自転車の元へ向かう。 
たくさんの車[20:56] 
安心の欠片もない[21:35] 
誰もいない[22:13] すると、駅員の人が「ほら早く乗って！」と言ってきて、「お金はあっちの駅で払ってくれればいいから！」 と言った。言うとおりに改札をくぐり、ギリギリで電車に乗り込んだ。危なかった･･･。 目的の駅で降り、そこの駅員に運賃を払い、駅を出る。友達が駅まで迎えに来てくれていたので、 一緒に家まで向かう。自転車に乗りたいというので乗せてみたところ、楽しそうに運転していた。 僕はというと、三週間ぶりに知り合いに会えたのが嬉しくて、口数が減っていた。 友達の家に着き、自転車を面に停め、中に入る。部屋に入るなりシャワーを貸してもらう。 ノズルから出てくる安心を全身で浴び、少し泣きそうになる。シャワーからあがったところで 友達が用意してくれた弁当を食べる。おいしくてありがたくて、また泣きそうになる。 何度もお礼を言い、でも一度も泣かないまま布団に入り、寝た。 一日の走行データ
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23日目−8月23日（土）−起床9時ごろ目を覚ます。昼まで漫画の「アイシールド21」を読んで過ごす。 結局家を出たのは昼過ぎだった。もっと早めに出発すればよかったんだけど、 そうさせてくれない面白さだった。家を出て駅まで向かう。友達はわざわざ駅まで見送りに来てくれて、 おまけに自転車をバラすのを手伝ってくれた。本当にありがとう。電車で新大阪へ向かい、途中で乗り換えたりしつつ、地元の駅に到着した。 帰宅駅に着いたのは午後5時ごろだった。 駅の構内で自転車を組み立てて外に出る。外は少し雨が降っていて、その雨の中を家に帰る。 3週間前にまったく同じ道を走ったはずなのに、目に入る景色は全く違って見えた。気がする。初日に寝袋を落っことした横断歩道を渡る。シャツが雨で濡れる。 20分ほどで家に着き、庭に自転車を停める。コロが吠える。僕が帰ってきたのがよほど嬉しいのか、 飼い主の顔を忘れただけなのかは分からない。でもまだ帰ってきた実感はなく、他人の家に お邪魔するかのような気分だ。 玄関を開ける。懐かしい匂いがする。戸をくぐり、大きな声で言う。 「ただいま！」 家の奥からそれを聞いた家族がぞろぞろと出てきてお出迎え。姉ちゃんと婆ちゃんは僕の顔を見て 「黒っ！」と驚いていた。 僕は雨でずぶ濡れだったので、 すぐに母さんが風呂を沸かしてくれた。服を脱いでシャワーを浴び、湯に浸かる。 風呂桶の狭さがなぜか嬉しい。湯の熱さが体を温めるにつれて、徐々に「帰ってきたんだな」という 実感が湧いた。 風呂からあがり、晩ご飯を食べてから自分の部屋に戻る。ベッドに寝転がり、これまでお遍路で起こった ことを思い出す。思い出せないこともあったけど、少し頑張って思い出す。思い出せない顔もあったけど、 声だけでも思い出そうとする。 そんな感じでお遍路の最終日が終わった。 | ||||||||||||||||||||||||||
