11日目−8月11日（月）− | ||||||||||||||||||
起床午前4時ごろ、駐車場に車が入ってくる音で目が覚める。疲労のおかげか深い眠りに入れたが、 あまり長い時間寝ていると怒られるかもしれない。そそくさと銀マットを丸めて、とりあえず 近くにあったスリーエフ（コンビニ）へ行ってみる。お店の前にベンチが置いてあったので、 そこに横になって再び寝なおす。6時ごろ起き上がり、朝ごはんとしておにぎりを3つ買って食べ、自転車に跨って走り出す。 ところが、全然力が出ない。 睡眠時間を合計すれば6時間以上にはなるのだが、なにせ野宿なので疲れが取りきれない。 とてもじゃないが漕ぐのは不可能だと判断し、次の38番のお寺まで歩くことに決める。 38番のお寺は足摺（あしずり）岬の付近にあるそうなので、その岬を目指して走る。 
朝[6:48] 
10km[6:55] 
港[6:58] 遍路小屋一日が始まったばかりだというのに覚束ない足取りで歩いていると、遍路用の休憩小屋があるのを見つけた。 これ幸いとお邪魔し、中にいたおっちゃんに「すいませんが、仮眠を･･･」と言うやいなや 小屋の端に並んでいる椅子に横になり、寝てしまう。30分ほど眠り、起きたところで小屋中央のテーブルに腰掛け、おっちゃんに麦茶を頂く。次のお寺や 遍路小屋の話なんかをしていると、小屋の奥から若い女性が現われた。話を聞くと、彼女はバイク（カブ）で 日本横断をしているらしく、北海道からここまでやってきたんだそうだ。 そして生まれも北海道だそうで、「北海道って本当にゴキブリいないんすか」と聞くと、 「あたしんとこだと最近出始めたよ、小さいやつだけど」とのこと。へえ。 おっちゃんとお姉さんに別れを告げ、小屋を出て自転車に跨り、小屋を後にする。 足摺岬
教室で着席する時間に[8:29] 
森を[8:33] 
抜ける[8:38] 
達成感[8:44] 
[8:53]
すごい庭だ[8:59] 「え？」 「そうか、じゃあこれ持っていきな」 そう言って渡されたのが、キーホルダーのようなお守りと真っ白な白衣（びゃくえ）だった。 なんでもお守りは「歩きの人には全員に渡してる」そうで、白衣は「余ったからあげる」とのこと。 白衣はいいにしても、僕は歩きなのでキーホルダーは貰えない。受け取ってから、そこで 「僕自転車で歩きじゃないんです、ごめんなさい」と白状すると、 「何でもいいからとりあえず持っときな」と言ってくれた。 少し大きめの白衣を抱きかかえ、自転車を停めた場所へ戻る。自転車の横に腰掛け、白衣をどうするか考える。 今自分が着ている「笈摺（おいずる）」は袖がなくて動きやすく、気に入っている。だからなるべくこっちを 着たい。だけど、せっかく新しいのを貰ったんだし。でも袖あると暑いしなあ。 結局白衣はバッグに押し込み、これまでどおり笈摺を着ることに。 自分由来の匂いに愛着ができてしまったのかもしれない。 その後地図でルートを確認すると、猛烈な眠気が襲ってきた。抗う術も、そして理由もないので、 そのまま体操座りで仮眠をとる。ここのお寺はほとんど観光名所化していて、観光客で溢れかえっていた。 彼らは「これがお遍路か」と物珍しげに僕を見ていて、 まるでペットショップのショーケースで眠る子犬の気分になったが、 気にせず眠る。 一眠りした後自転車に跨り、次の39番のお寺を目指す。 海女のおばあちゃん地図によると、次のお寺は結構離れた場所にあるらしい。今日中に着くのは難しそうだ。 近づけるだけ近づいて、明日打とう。だけど昨日みたいな無理はしちゃだめだ。 過去の反省を活かして自分を戒め、海岸線を西へ走る。だいたい時速12kmぐらいの、すごくやる気のないスピードで走っていると、民家の前にいたおばあちゃんに 「休んでいきなよ」と声をかけられた。遠慮なく家にあがらせてもらい、オロナミンCの小瓶を頂く。 炭酸が苦手なのでちょびちょび飲みながら、おばあちゃんの身の上話を聞く。おばあちゃんは今年85歳で、 既に嫁に出た娘さんが3人いるらしい。泳ぎが得意で、今も海に潜っては色々なものを採っているそうだ。 海に入る道具とかを見せてもらった。 
海の見える玄関[10:30] 39番へ
海の見える町[10:48] 
もうすぐお昼だ[11:51] 
なんの花だろう[11:54] 
入り江？[12:18] そして食べようとしたところで、 
落とす[12:34] 突然にわか雨が振り出し、それが止むのを待って海の駅を後にする。今度こそ何か食べようと、 すぐ近くのスーパーに入り、弁当を買って食べる。 
得々[12:56] 
ステゴザウルスだ[13:59] 昼寝少し傾斜のついた坂を自転車を押して歩いていると、再び眠気が襲ってきた。疲労と眠気のせいか、 その時の僕の頭からはTPOという概念が抜け落ちていたらしく、歩道に銀マットを敷いて横になり、 数分もしないうちに眠ってしまった。30分ほど寝たところで、誰かが僕を起こした。お母さんかと思ったら、警察だった。パトロールしていたところ、 歩道に僕が倒れているのを見つけ、パトカーを近くに停めて様子を見に来たらしい。「死んでんのかと思った」 と苦笑するおっちゃんの警官に、ひたすら頭を下げて謝った。歩道で寝ては、いけない。教訓を 胸に刻み、再び自転車に跨って走り出す。 ホテル探しそこから更に1時間ちょっと走ったあたりで、旅館やらホテルやらが たくさんある旅館街を見つけた。地図に載っているだけでも９軒ある。次の39番のお寺は 結構きつそうなので、無理せずにここで泊まっていくことにした。宿をとるなんて 5日ぶりだ。胸が躍る。まずスーパーの駐車場に座り込み、あちこちの旅館に電話をして値段の相場を測り、 洗濯機や冷房設備などの条件を聞き、時々値段交渉をし、結局ホテルオレンジというホテルに泊まることに 決める。電話で予約し、ホテルへ向かう。 自転車にカギをかけ、靴を脱いで中に入る。名前はホテルだが、どちらかというと旅館に近い趣だ。 元気なお手伝いさんに案内されて部屋に入り、荷物を置き、ばたっと横に倒れる。これ以上ないほどの 安心が体を包み込み、そのまま寝そうになるが、その前に風呂に入ることに。 さっきの安心を今度は液体にして溜めたような風呂に浸かり、部屋にあった浴衣を着てロビーまで行き、そこでマガジンを読む。 知らない漫画だらけで何がなんだか分からず、雑誌を閉じてロビー中央に置かれているテレビに目をやると、 ちょうど北島康介選手がオリンピックで金メダルを取ったところだった。 部屋に戻り、友達に「なんも言えねえ」と電話をし、書いてなかった分の日記を書く。 7時になったところで、晩ご飯を食べに食堂へ行き、そこで目を丸くする。6000円という宿賃で 泊まっているはずなのに、食卓にはそれだけで3000円はいきそうな料理が並んでいた。数々の魚介類に、 見ただけでおいしいと分かる煮物、天ぷら、汁物に、会えるはずもないと思っていたカツオのたたきまで登場し、 席に着く前に暫し呆然としてしまった。その上食堂のおばちゃんが「お代わりしたくなったら言ってよ」と 優しい言葉までかけてくれるものだから、嫌でも「人生でおいしかった食事ベスト5」にランクインせざるを えない。 食後にオレンジジュースまで頂いちゃって、言うことなしの食事を終え、食堂を出る。 満足という満足を体中から漂わせながら部屋へ戻り、ラジオを取り、歯を磨いて温かい布団に潜り込む。 今回は一泊二食付きで宿泊しているから、明日の朝には朝食も出る。鯵だろうか。秋刀魚だろうか。 まだ見ぬ御膳に思いを馳せ、眠りにつく。 一日の走行データ
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